サイト紹介

北海道東部 冷温帯

 雨龍 Uryu (北海道大学 雨龍研究林) コアサイト 北海道雨竜郡幌加内町

北海道北部に位置する冷温帯の天然性針広混交林。森林草原調査のコア・準コアサイトとしては最も北にあるサイト。トドマツ、アカエゾマツなどの常緑針葉樹およびミズナラ、イタヤカエデ、ダケカンバなどの落葉広葉樹からなる。林床にはササが密生している。

北海道大学 雨龍研究林

 足寄 Ashoro (九州大学 北海道演習林) コアサイト 北海道足寄郡足寄町

十勝北部、東大雪東端の地形が比較的なだらかな丘陵地に位置する。ほとんど人為撹乱を受けていない広葉樹天然林から、主に伐採撹乱後のさまざまな林齡の広葉樹二次林などからなる。天然林は、ミズナラ、カシワ、エゾイタヤ、オオバボダイジュ、シナノキ等が優占する(調査区はエゾイタヤ・シナノキ林にある)。

九州大学大学 北海道演習林

 

北海道西部 冷温帯

 苫小牧 Tomakomai (北海道大学 苫小牧研究林) コアサイト 北海道苫小牧市

北海道西部区域の冷温帯林を代表する森林として選定されたサイトのひとつ。ミズナラ・カエデ類・シナノキが優占する落葉広葉樹林、落葉広葉樹二次林、およびカラマツ・トドマツ等針葉樹の植林地からなる.地形は平坦で1669年と1739年噴火の樽前火山灰が約2m堆積している。また1954年と2004年の台風による大きな撹乱があり、これらの撹乱履歴が森林に強い影響を与えている。

北海道大学 苫小牧研究林

 野幌 Nopporo  準コアサイト 北海道江別市

石狩平野のなだらかな丘陵地に存在する、天然生の冷温帯落葉広葉樹林。大都市近郊にありながらまとまった面積の森林が残されている道立自然公園野幌森林公園内に位置する。ミズナラ、シナノキ、ヤチダモ、ハルニレなど多種の混生する落葉広葉樹林で、針葉樹であるトドマツも混交する。林床はササやハイイヌガヤに覆われる。(写真 相場慎一郎氏)

 

本州中北部日本海側 亜高山帯

 おたの申す平 Otanomosutaira (信州大学 志賀高原) コアサイト 長野県下高井郡山ノ内町

本州中部日本海側区域の亜高山帯林を代表する森林として選定されたサイトのひとつ。「おたの申す平」研究林のプロットはオオシラビソ・コメツガが優占する亜高山帯針葉樹林。トウヒ、ダケカンバなども混じる。1960年代にはIBP(国際生物学事業計画)のサイトとして森林の物質生産量調査なども行われている。近くには、同じくモニ1000のサイトであるカヤの平の調査区がある。

信州大学 志賀自然教育園

 

本州中北部日本海側 冷温帯

 カヌマ沢 Kanumazawa (森林総合研究所 カヌマ沢渓畔林試験地) コアサイト 岩手県奥州市

カツラ、トチノキ、サワグルミ、ブナの優占する冷温帯落葉広葉樹林。渓流沿いに発達した天然林で、最老木の推定樹齢は約1000年と見積られ、人為による撹乱の痕跡はほとんど認められない。冬季の積雪は最大で2m強に達する。林床の多くをユキツバキの群落が優占しており、ニホンカモシカやツキノワグマなどの中型・大型獣も棲息する。

 金目川 Kanamegawa  準コアサイト 山形県西置賜郡小国町

日本海型のブナの優占する天然生落葉広葉樹(トチノキ、イタヤカエデ混交)老齢林分。ブナの樹高は国内最大級(約40m)。低標高域(600m)に残るブナ林としては東北地方で極めて貴重な林分。林床にササを欠き低木(テツカエデ)が優占する。ただし、近年はブナの大木の枯死が目立ち、林床が明るくなってササの侵入が進んでいる。

 

本州北部太平洋側 冷温帯

 小川 Ogawa (森林総合研究所 小川試験地) コアサイト 茨城県北茨城市

ブナ、イヌブナ、コナラなどの優占する冷温帯落葉広葉樹林。積雪が少ないので太平洋型ブナ林に属する。阿武隈山地南部のなだらかな丘陵地に位置し、周囲を落葉広葉樹二次林やスギ人工林、草地などに囲まれている。明治以降は伐採の記録はないが、山火事や放牧など人為的攪乱後の古い二次林である。これまでに多くの生態学的研究が行われており、日本を代表する長期観察調査地のひとつ。

 秩父 Chichibu (東京大学 秩父演習林) コアサイト 埼玉県秩父市

関東山地の冷温帯林を代表するサイトの一つで、奥秩父山域の埼玉県側に位置する。イヌブナ、ブナ、ツガに代表される老齢の針広混交林、ウダイカンバやヤシャブシ、ミズメが優占する落葉広葉樹の二次林、スギの植林地で構成される。地形は急峻で所々に岩石の露出がみられる。近年はシカなどが森林に強い影響を与えている。(文・写真 東京大学 秩父演習林)

東京大学 秩父演習林

 

中部太平洋側 暖温帯

 愛知赤津 Aichi-akazu (東京大学 生態水文学研究所) コアサイト 愛知県瀬戸市

暖温帯に位置する二次林。主にコナラ・アカマツ・ヒノキ・コハウチワカエデを上層木とし、中下層にヤブツバキ・ヒサカキ・サカキ等の常緑広葉樹類がみられる。近年はマツ枯れやナラ枯れといった病害虫の影響を強く受けている。調査区内を流れる沢の流水量が継続的に計測されるなど、水文学的研究も盛んに行われている。

東京大学 生態水文学研究所

 

北陸・山陰 冷温帯

 大佐渡 Osado (新潟大学 佐渡ステーション演習林) コアサイト 新潟県佐渡市

佐渡島北部の大佐渡山地山腹-稜線上に位置する。佐渡島に唯一残存する500年生の天然スギ林。冬季に北西季節風を正面から受けるため、積雪、霧、酸性降下物などの影響を調べるのに好適なサイトである。地形は非常に険しく、平坦な斜面はほとんど無い。維管束植物の総種数は約400種、観察される鳥類は約60種である。植物種には固有種はほとんど認められない。甲虫類・ほ乳類に固有種が数種あり、いずれも演習林内に分布する。

新潟大学 佐渡ステーション演習林

 芦生 Ashiu (京都大学 芦生研究林) コアサイト 京都府南丹市

暖温帯林から冷温帯林への移行帯に位置し、植物の種類も多い。研究林の本体部分は、天然生のスギとブナを主体とする針広混交林である。研究林設定以来、人手が全く加えられていない原生的な状態が保持されている部分を含む。近年はシカが植生に大きな影響を与えている。

京都大学 芦生研究林

 

北陸・山陰 暖温帯

 上賀茂 Kamigamo (京都大学 上賀茂試験地) コアサイト 京都市北区

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京都市街の北側に位置するヒノキ・アカマツなどの針葉樹林。元々は、上賀茂神社の社領地であったものが明治時代初めにに官林(国有林)となり、戦後、国有林から京都大学へ移管された経緯がある。1980年くらいまでは、陽樹であるアカマツが広く分布していた。しかし、マツノザイセンチュウによるマツ枯れ被害後、アカマツ林の中・下層に存在していたヒノキが急成長した結果、現在では、純林状のヒノキ林となっているところが多い。

京都大学 上賀茂試験地

 

瀬戸内 暖温帯

 宮島 Miyajima 準コアサイト 広島県廿日市市

常緑広葉樹の二次林。1970年代頃の松枯れにより高木層を形成していたアカマツが枯死した場所に成立した。このような場所は宮島に多くみられる。シカの採食活動による植生への影響が少なからずあり、シカが好まない植物であるミミズバイ、イヌガシ、シロダモ、アセビなどが高い密度で生育する。(写真 奥田敏統氏)

 

紀伊半島・四国・九州 冷温帯

 椎葉 Shiiba (九州大学 宮崎演習林) 準コアサイト 宮崎県東臼杵郡椎葉村

九州山地中央部に位置し、モミ、ツガなどの針葉樹とブナを含む落葉広葉樹が混交した天然生林。九州のサイトの中で、ブナなどの冷温帯性の落葉広葉樹が生育する唯一のサイトである。地形は急峻。近年増加しているシカの採食により下層を覆っていたスズタケ群落が減少している。

九州大学 宮崎演習林

 

紀伊半島・四国・九州 暖温帯

 和歌山 Wakayama (京都大学 和歌山演習林) コアサイト 和歌山県有田郡有田川町

暖温帯と冷温帯の中間に位置するモミ・ツガ天然性林。1926年の研究林設定以来伐採などはおこなわれていない。

京都大学 和歌山研究林

 市ノ又 Ichinomata (森林総合研究所 市ノ又試験地) コアサイト 高知県幡多郡四万十町

温帯性針葉樹と常緑広葉樹の混交林。傾斜30-35°の急峻山地斜面で尾根と斜面で樹種構成が変わる。岩尾根では最上層にヒノキ、ツガが優占し、緩傾斜の尾根ではアカガシ、イスノキが上層を占める。斜面ではモミ、ツガおよびツクバネガシ、ウラジロガシなどの常緑カシが占める。亜高木層にはサカキ、ヤブツバキ、シキミ、イヌガシなどが多い。(写真 野口麻穂子氏)

森林総合研究所 市ノ又試験地

 対馬龍良山 Tsushima-Mt. Tatera 準コアサイト 長崎県対馬市

対馬の龍良山(たてらやま)の麓にある緩やかな斜面に広がる暖温帯の照葉樹林。スダジイ、イスノキ、サカキ、ヤブツバキなどが優占する。龍良山は神地とされており、伐採の記録がない自然度の高い原始林が残され、国の天然記念物に指定されている。直径1mを超えるスダジイやイスノキなどの巨木が散見されるが、近年の台風などによるギャップ形成がみられる。

 田野 Tano (宮崎大学 田野フィールド) コアサイト 宮崎県宮崎市田野町

宮崎平野の西端の丘陵地帯に位置する、天然生常緑広葉樹二次林。過去は薪炭林的利用がなされていたと考えられるが、大学所有以降の最近百年近くは伐採などはされていない。林冠はシイや常緑カシ類が優占する。地形は急峻である。コナラ、ネムノキやヤマザクラなどの落葉広葉樹が数少なく混交するが、枯死しつつある。(写真 高木正博氏)

宮崎大学田野フィールド(演習林)

 綾 Aya (森林総合研究所 綾リサーチサイト) コアサイト 宮崎県東諸県郡綾町

紀伊半島・四国・九州区域の暖温帯林を代表する森林として選定されたサイトのひとつ。代表的な照葉樹林である。林冠木の最優占種はイスノキであり、他にブナ科、クスノキ科、ツバキ科の常緑樹種が林冠層、亜高木層の主な構成種である。宮崎県綾町の綾北川流域の急峻な北向き斜面に位置し、この地域には自然状態の比較的よく保たれた照葉樹林が300 ha以上連続している。(写真 齋藤哲氏)

森林総合研究所 綾リサーチサイト

  

奄美・琉球諸島 暖温帯

 与那 Yona (琉球大学 与那フィールド) コアサイト 沖縄県国頭郡国頭村

奄美・琉球諸島の森林を代表するサイトとして選定された。イタジイを優占種とする亜熱帯性常緑広葉樹林が広がっており、地形は急峻かつ複雑である。亜熱帯性の湿潤な気候と島嶼環境のもと、数多くの固有種が生育し、種の多様性も高い。ノグチゲラ、ヤンバルクイナ、ケナガネズミなど国指定の天然記念物も生息する。1954年の与那演習林(前身)設立以前は、薪炭林として古くから利用されていた。ただし、皆伐のような強度伐採は経験していない。(写真 高嶋敦史氏)

琉球大学 与那フィールド

 西表 Iriomote  準コアサイト 沖縄県八重山郡竹富町

西表島の最高峰古見岳の南麓に位置する、亜熱帯性常緑広葉樹林。コア・準コアサイト中で最西端・最南端かつ最も温暖なサイト。多くの固有種が生育し、種の多様性が高い。高温多湿な気候のため、着生植物や大型のシダ類も豊富に生育する。オキナワウラジロガシの大木が多く残されている、西表島でも希少な原生的な森林だが、近年台風による大規模な撹乱が度々発生し、森林の様相が大きく変化している。